日記のページ 2015

12月の日記


自ら癒す


 教室の今年最後のイベント、
忘年会も賑やかに終わり、 
2015年もいろいろあったなぁと、思い返す。
いろいろあったけれど、
実際はあっという間の1年で、
人間は年を重ねるほどに、
時間の流れるスピードが増していくのだろうかと
思えてならない。
ぼくは仕事がら、自宅にいる時間が長いですが、
それでもイレギュラーな仕事も少なくないため、
ルーティンで、いつも心穏やか・・・
というわけには、いかない。
そんなバタバタと忙しい日常、
世知辛い世の中だからこそ心落ち着ける時間を
意識的につくらなければ。
座禅組んだり、小説読んだり、音楽聴いたり、
温泉につかったり・・・。
ぼくは自分の心が刺々しくなってきたなと感じたら、
自然とバロックやルネサンス期の音楽、
ジョビンやジョアン・ジルベルトなどのボサノバなどが聴きたくなる。

とりわけ、バロックの巨匠、
バッハの音楽には癒される。
音楽評論家の吉田秀和さんは
著書「私の好きな音楽」の中で
バッハについてこう語っています。

 ーバッハは、バッハの作品は、私にとっては、
ヨーロッパ音楽のアルファであり、オメガである。
いや、始まりというより土台であり、また、
その最高の究極である。
私にとっては、音楽をきくということは、
それが特にヨーロッパ音楽である場合は絶対に、
多かれ少なかれ、バッハの音楽をきいている時の
その経験を土台にして、きいているといってよい。
その理屈をこまかく、ここで、書くことはできない。
いや、ここだけでなく、私には
いつまでたっても、できないかもしれない。
だから、私は、もっと、ひらべったく
「音楽とは何か?ということを、
自分はバッハによって知った」
と言っておけばよいのかもしれない。

 的確な表現だ。
ぼくもすべての音楽を聴くときの土台と
なっていると思う。
バッハは。
15曲からなる、シンプルであるはずの
2声のインベンションにはモチーフの発展方法、
インターバルやリズムの
バリエーションにおけるアイディアの
すべてが盛り込まれているし、
和声的に制約をうける無伴奏チェロ組曲においても
単旋律なのに、
複数のメロディーやリズムが同時に聴こえてくる。

 こうして、バッハの大きな音楽の
泉にふれることによって、
やさぐれた心を慰められるのは
喜びに他なりませんが、
ぼくのようにちょこっとばかり
楽器(ギター)ができる人間には
もう1つのおいしい、おまけがある。
それは、自らがバッハを演奏し、自ら癒すこと。
ぼくの場合は
ヴァイオリンパルティ―タ第2番のシャコンヌ、
リュート組曲BWV998のプレリュードなどを弾くと、
何だかゆっくりと心がほぐれていく感覚がある。
もちろん弾くのに易しい曲ではないから、
ミスったりもしますが誰のためでもない
自分のためだけに弾くバッハ。
演奏しながら、
バッハの紡いだ音たちとその美しさに、
ただ無心にひたればいい。
近代の作曲家だとタンスマンなんかもいい。
バッハとも違った移り行く多調感と、
ロマンティックなメロディーのバランスが絶妙で
落ち着きたい時に弾くと意外に、しっくりくる。

 人にはいろんな感情の時がある。
楽しい、嬉しい、悲しい、怒り、不安、絶望・・・。
ポジティブな時はもちろん、
ネガティブになった時にも
音楽には少なからず救いの力があると思う。
楽器ができる人は、
「自分がこんな感情の時はこの曲を弾く」
なんていうレパートリーがあると
立ち直りのルーティンみたいなもので
役立つかもしれない。

来年もそんな音楽に、1曲でも多く出会えればいいな。


11月の日記


キューバのトイレ事情


 超貧乏旅行ではない。
かといって金にものをいわせて
我が物顔で他国の上等なもの、
表面的なものだけを見る旅でもない。
節約しながらも、極力自分の足で歩き、
見たいものは見、
聴きたいものは聴き、
食べたいものは食べることに妥協しない庶民の旅。
今月はキューバに行ってきました。

 10年ぶりにメキシコを経由し、
家人と共にホセ・マルティン空港に降り立った。
今回のキューバもなかなか、強烈だった。
空港からタクシーで20~30分くらいで
ハバナ市街に到着する。
アメリカとの国交正常化のニュースを聞いたのは
今年のはじめ。
たった5泊しただけだから偉そうなことは
言えないけれど、
じわじわとこのキューバという国も
変わりつつあることを
肌で感じないわけにはいかなかった。
 キューバのトレードマークの一つである革命前の
ボロボロクラシックカーは今も現役で
たくさんマレコン通りを走っていたけれど、
10年前よりあきらかに
近年に生産された新しめの車の比率が増えてきた。
時計の針が止まってしまったような街並みにも
スマートフォンが普及し
(キューバ人はお互いの
顔を見ながら話したいらしく、
テレビ電話のように使っているのを多く見かけた)、
ハバナ旧市街ではヨーロッパからの観光客も激増し、
どこのホテルも平日にも関わらず満室状態。
宿泊先は、いつもの旅行のルールに従って、
一切予約していかなかったので、
寝床の確保に気をもんだ日も少なくなかった。
この先、アメリカ人がどっと観光でやってきら、
キューバはどうなってしまうのだろう?

 ハバナ到着翌日の早朝、国内線での移動
(ハバナ↔サンティアゴ・デ・クーバ間)の
ため再びタクシーで空港にむかった。
クバーナ航空には間違いなく
インターネットで予約を入れ、
プリントアウトしたeチケットを提示したにも
関わらず結局、
チェックインカウンターで、すったもんだの末、
飛行機に乗せないという大アクシデントの花を
ぼくの旅に添えてくれたのも、さすがキューバ!
コンピューターシステムの脆弱性ゆえだろう。
おかげで予定は台なしだ。・・・まあ、それも旅か。
(予定変更して、ハバナから南へ飛行機で
30分くらいのフベントゥという島に飛ぶことにした)
キューバ人も言っていたがこの国営航空会社は
しょっちゅうトラブっているらしい。
ぼくが利用しようとしていた日も
広くはない出発ロビーには長時間、
フライトを待たされているお客さんが
大勢ぐったりとしていた。
しかし、キューバ人にとっては、
いつものことらしく腹をたてている人はいないので、
ここでもしみじみ、キューバらしいなあ・・・
と感心してしまった。

キューバでは 時々、とんでもない
公共トイレに遭遇する。
代表格はなんと空港! 国際、国内線の発着を
する国の玄関とも呼べる空港にもかかわらず、
国内線ロビーのトイレは、便座なし、紙なし、
水が流れない。
3拍子揃っているのだ。
キューバでは、道路、水道などインフラへの
テコ入れは 経済上、
はたまたあまり細かいことを
気にしない国民性ゆえかかなり、おざなりだ。
高級ホテルは、まあ問題ないだろうが、
中堅ホテルクラスからは、トイレの使用後に
流す水の水圧はけっこう低くなる。
中堅よりさらにリーズナブルなカサ等の
宿泊施設ともなれば、
さらにその水圧はがくんと落ち、
あまりに低い水圧のため排泄物が
ちょっと大きかったりしたら、
1発で流れるかどうかは、ギャンブルとなる。
しかも1回戦を負けたり、引き分けにした場合は
2回戦目を戦うための水がタンクにたまるまで、
しばらく時間がかかるので、その間沈思黙考・・・。

 旅にロマンと快適の両方を望む人はキューバに
行ってはいけない。
どちらも満たされれば、いうことなしだがどちらかが
犠牲になることもある。
もちろんその両方が失われる時も・・・。
犠牲になること、満たされない思い、憤懣、
それらすら楽しめる人は、
キューバに惹きつけられるだろう。
何故、キューバに行くのか?
もちろん最大の理由は
音楽がいいからに決まっている。
16世紀以降、ヨーロッパ人による植民地化と
奴隷制度の混沌、そしてアメリカの統治、
キューバ革命・・・。
様々な文化の化学反応がこの島にしかない
独自の音楽を形成していった。
 キューバではそこかしこから音楽が聴こえてくる。
生きる事と、音楽が密接に繋がっているようだ。
旅では屋外でトラッドなキューバ音楽を聴くことも
多かったがその編成は様々で
ギター、トレス、ウッドベース、ヴァイオリン、
ピアノ、マラカス等・・
しかし、どんな小さな編成のグループでも必ず、
ボンゴは入っている。
そのボンゴがもちろんマイクもPAも
使っていないのに、
スッコーンと遠くまで届く乾いた実に、
心に響くいい音なのだ。
この島で作られた楽器だから、
この島の空気や湿度との
絶妙な関係を結んでいるからこそ
ここでしか聴くことができない、
・・・そんな感動的な美しい音。
シンコペーションのリズムにのる、
メインヴォーカルの
後にバンドメンバーがつける
コロ(コーラス)がさらにリズムのうねりとなって、
これまた気持ちいい。

 キューバを旅し、キューバ人と心で触れあう
機会を持った時に日本では当たり前のこと、
例えばトイレの水が流れる、
車や物がちょっと古くなればすぐ買い替える、
社会や人間関係に絶望して鬱になる・・・など。
そんなことは、人間が生きていくことには、
本質的にはたいした問題ではないことを
痛いくらいに思い知らされる。
もちろん、日本にいい人間も、
悪い人間もいるように、
キューバにもいい人間、悪い人間がいる。
旅をしていれば、疲れるし、気も緩む時もあり、
そんな時は悪い人間にぼったくられそうになったり、
実際、ぼったくられることもある。
(ハバナは闇葉巻売りや、
人力タクシーのぼったくりが多数、
街中を徘徊してるので気をつけるべし)
しかし、素晴らしい音楽に出会ったり、
空港や宿泊先が見つからず困っていると、
何のみかえりも求めず
この一旅行者を一生懸命、助けてくれる人が突然、
現れたりするのだ。
今回は、家人ととも同じ日にiPhoneを盗まれたり、
予約していた飛行機に乗れなかったりと、
トラブルが多かったが、その分、
助けてくれる人も多かった。
ぼくが、日本人ではなく、
日本に来た旅行者で、もし、
このようなトラブルに見舞われ困っていたら

日本人はこんなにもぼくを助けてくれるだろうか・・・?
それくらいに、思えるほど今回は
キューバ人に助けられた。
(飛行機、宿泊先の手配等)
 トイレの水が流れなかったり、少しくらい、
ぼったくりにあっても、
それらすべてがちっぽけな事に思えるほどの
おおらかな人の優しさや、音楽の美しさが
キューバにはあるのだ。

 旅の必需品は、人それぞれ、いろいろあるけれど、
投資0円で持っていける最も大切なもののひとつは
「笑顔」だと思う。
もちろん、タクシーを利用して
乗車前に聞いた料金と、
降車時に請求される金額が違ったら、
運転手と大喧嘩することもある。
常に「笑顔」でもいられない状況もある。
しかし、旅の間中、ムスッとしてるのもどうかと、思う。
「笑顔」には、語学力の補いや、窮地を乗り切る
(誰かが助けてくれたり)力がある。
そして、できればもうひとつこの必需品が
あるといい・・・。
それは何でもいいから「楽器が弾けること」。
(歌でもいい)
キューバ音楽のトゥンバオ(伴奏)をギターで、
弾くことができたので
キューバのミュージシャンとセッションの
機会が少し、もてた。
ぼくが典型的なトゥンバオのイントロを弾くと、
打ち合わせもしていないのに
すぐにバックのメンバーがバーンと、
入ってくるのは、感動的。
一緒に演奏した後は一気にうちとける。
異なる言語を使っていても音楽をするもの同士は、
音楽によってまさに国境を越える
コミュニケーションができることを、
再認識することができた。




10月の日記

Vamos a comer!

 来月はメキシコ、キューバへ旅する。
その準備をしているところ。
今回はトランジットとはいえアメリカにも
入国するので3ヵ国の入国に
必要な書類等を
よく調べ、用意しなくてはならない。
メキシコはパスポートのみでとくに他は必要ないが、
アメリカにはESTAの取得、
キューバでは日本領事館に行って旅行保険証書の
提示やツーリストカードと
呼ばれるものを事前に
取得しておかなくてはならない。
その他、情報収集、11月末のライブの準備、
仕事の前倒し貯金、レッスン調整、
国際免許証の取得など諸々・・・。

 日程は11/4~11/14までの11日間。
時差、移動時間を考慮すれば旅先での宿泊数は
8泊の計算になります。
いつも通り、具体的な宿泊先
(ホテル、その他宿泊施設)は
まったく決めないで出発しますが、
飛行機での移動スケジュールは、
無駄なく効率よく動けるよう、
これだけは熟考。

東京→ロサンゼルス→メキシコ(1泊)→
ハバナ/キューバ(1泊)→
サンティアゴ・デ・クーバ/キューバ(3泊)→
ハバナ/キューバ(1泊)→メキシコ(2泊)→
ロサンゼルス→東京

実に飛行機の搭乗手続きは8回にも及び、
利用航空会社はシンガポール航空、アメリカン航空、
アエロメヒコ、キューバジェットの4社になる。

これだけ飛行機に乗る回数が多くなってしまったのは
前回のキューバの旅では訪れることができなかった、
カリブ海ラテン音楽の心臓部ともいえる
サンティアゴ・デ・クーバまで
足をのばすことにしたから。
(メキシコからサンティアゴ・デ・クーバへの
直行便があればよかったが、
これは存在せずとにかく1度ハバナに
降り立つしかない)
現在の首都ハバナから、このかつてのキューバの
首都まではなんと900キロ!
カリブ海に浮かぶ東西に細長い小さい島くらいに
地図上では見えてしまうが、
その面積は109.884平方キロメートルで、
日本の本州の半分にも相当する。
ハバナからレンタカーでも借りて気楽に
サンティアゴ・デ・クーバまで
ドライブでもしていこうかと
思って距離をはかってみたら、意外に遠くて驚いた。
10年まえにハバナに行った時もショートトリップで
レンタカーを借りたが、都市を離れれば
舗装された道も少なく悪路が続く。
さすがに限られた旅行日程の中で、悪路覚悟、
時間をかけてレンタカーでの移動は断念し、
ハバナからサンティアゴ・デ・クーバへはキューバの
国内航空会社の飛行機を予約した。
おそらく、時間やストレスやガソリン代などを
換算すれば飛行機の方が安くつくだろう。
(列車もあるが時刻表通り運行されること
疑わしく安くもなく、バスは安いが15時間もかかり
冷房が異常にきついらしい・・・)
この飛行時間1時間ちょっとの国内線の
往復料金は35.000円くらい。

 旅の大きな目的はやはりキューバ再訪。
アメリカとの国交正常化によって、
これから大きくキューバの経済情勢、
景観も変わっていく。
その前にあの時が止まったような街角の情景、
またそこから流れてくる音楽を目に耳に
焼き付けておきたかった。

 Vamos a comer ! 
これは「さあ、食べよう!」の意。
ぼくの大好きな作家、島田雅彦さんは
「食いものの恨み」というエッセイの中で
「旅情の半分は舌で感ずるものだ」といっています。
まさに同感、ぼくも食に関心を
持たずに旅をして何が楽しい?と、思う。
旅先の名物はとりあえず口に入れてみたいし、
ローカルな市場ではどんなものが売られているかも、
のぞいてみたくなる。
食事はガイドブックにのってはいない、
観光客があまり行かないような地元の人のための
食堂なんかに行った方が、ぜったい楽しいし、
思いがけないコミュニケーションが
生まれたりもする。
いろんな国の、音楽や芸術や文化を耳や
肌感覚でふれることも重要ですが、
彼の地の肉や魚や野菜を自分の舌や胃袋で感じることは、
それ以上に強烈な旅のスパイスとなる。
10年前のキューバで驚いたのはロブスターの激安!
ハバナの中華レストラン食べた大ぶり、
ぷりぷり1匹もののグリルされたロブスターが
1.000円以下。
無類のエビ偏愛者としてのぼくにとって、
キューバは、食においても天国なのだ。
今回、密かに自分に課したミッションは、
「1日1回、必ずロブスターを食べる!」です。


9月の日記

次はエレクトリック

 スクールの秋の
アコースティック系演奏会おわりました。
参加してくれた皆さま、お客様、
ありがとうございました。
フィナーレで出演者全員ステージにのっての
パフォーマンスは今年で3回目。
毎年、この9月の本番にむけて7月くらいから
近所の市民センターでのリハーサルが始まります。
今回選曲し、アレンジしたのはラヴェルの
「ボレロ」。
誰もが知っていて口ずさめるくらい有名な
メロディーですが、弾いてみるとこれが
意外に難しい。
長い音符の後に、1拍を4つに割った16分音符の
最後の音から次のフレーズが始まったりと、
リハーサルでは、誰かがその間を待ち切れず、
フライングする音がちらほらと
聴こえてきたり・・・。
でも、やっぱりアンサンブルは音楽の
大きな喜びの1つです。
このチームワークで作品をつくる感動は
経験してみないとわからない。
 演奏会でのテーマは、
みんなでつくるステージです。
多くの生徒さんに参加してほしく、経験の浅い方でも
無理なくできるパートをつくるよう心がけています。
年齢や境遇も様々な人々の集まりなので、
なかなか一筋縄でいかないこともありますが、
だからこそ、何かの縁で同じスクールに
通う仲間として、
学びと思いやりのあるコミュニケーションの
場でありたいと願って。

 アコースティック系の演奏会を終えて、
次はこれも近年恒例の秋のエレクトリックライブ
ひかえています。
場所はJR日野駅から歩いてすぐの
ライブハウス”Soul K”。
出演者もほぼ決まりました。ロックやジャズを
中心にしたノンジャンルの楽しいライブです。
今年もこの日のためにオリジナル曲を
つくっています。
いつも、ラストはギター奪い合いの
アドリブバトルになったりして・・・。

8月の日記

ソーセージ?


 8月は教室の秋の大ホール演奏会間近と
いうことで、その準備でなかなか忙しい。
リハーサル、チラシ・プログラム・
タイムテーブル作成、
演奏前に影マイクで読む生徒さん自身に
作成してもらったコメントの収集・まとめ、
スタッフとの打ち合わせ、出演順・ステージ配置・
演出を考えたり、と
出演者ひとりひとりにスポットライトをあて、
楽しんでもらえるようにたくさんの細々とした
仕事に心を砕きます。

 ぼくは外国旅行で痛切に感じることは、
普段勉強をさぼっている外国語は、
たまに出かけた旅先では使い物にならない。
例えば、逆にささやかでも筋トレやストレッチなどを
日常の習慣にしていれば、
体の軽やかさや病気への抵抗力は何も
やらないよりは格段に勝るはず。
楽器演奏においてもこれはまったく当てはまって、
おそらく年に1回、ステージに立つだけでは自分の
理想のパフォーマンスにはなかなか近づけない。
たま~に、やることはだいたい緊張して
実力を発揮できない。
自分を表現するには、少なくとも年に数回は
自分を人前にさらす必要はあるでしょう。
人前にさらす機会を増やせば、
緊張感とも親和性が生まれて体が動いてくる。

 よく生徒さんに、
どうしたら緊張しなくなりますか?
と、質問をうけることがありますが、
常に表現が深まるよう努め、
いつも新しいことにチャレンジしていたならば
いい意味でも悪い意味でも緊張感がゼロに
なることはないと思っています。
勝負時でも、体がリラックスしてしなやかに
動くために、普段から心が穏やかになる
トレーニングをするしかない。
ゼロにはならないかもしれないけれど、
軽減することはできる。
一番、緊張するのはやはり、ステージ。
人前にギター1本持って出ていくのはほんとうに怖い。
直前は逃げ出したくなる。
とりあえず、小さな演奏会、
または友達や家族の前でも
機会があれば演奏する回数を増やし、
常に緊張状態をつくってやれば、緊張状態の自分を
俯瞰・コントロールできるようになると信じ・・・。

 こんな考えでぼくは、生徒さんにできるだけ
たくさん演奏の場を提供できるような
教室運営を心がけています。
大ホールでの演奏会はもちろん、
ライブハウスでのライブ、
教室でのサロンコンサート、小さなイベント等。
先日は9/6に控えた、
府中中央文化センターひばりホール
(13:00スタート、入場無料)での
演奏会の予行演習として
サロンコンサートを企画しました。
これはまた大ホールと違った緊張感が漂います。
それは、サロンなのでステージの段差がなく
演奏者とリスナーの距離が異常に近い・・・。
これも試練、いい経験。
積極的に参加してくれる生徒さんも多く、
楽しいコンサートでした。
緊張感あふれる、ギター独奏の後はいつも、
賑やかな飲み会、
ルール無用セッションに流れていくのが
いつものサロンコンサート。
飲み会にはつまみも必要!そこで面白企画として、
手作りソーセージ講座も同時開催。
みんなで羊の腸に肉詰めは大盛り上がり。
その模様はこちら

ひばりホールでの演奏会、お時間ある方、
是非いらしてください。

7月の日記

休講のお知らせ

 年に1度は海外に旅することにしている。
去年春、東ヨーロッパ
(ブルガリア、ルーマニア、ギリシャ)を旅してから
久方、日本を脱出していないな、とふと気づく。
気づいてしまった以上、
旅に出たくて仕方がなくなる。
仕方がなくなると、スペインのアンダルシアで
洞窟フラメンコに入り浸ったり、
ブラジルのオリンピック間近の浮足立った喧噪の中、
サンバを聴きながらリオの海岸で
シュラスコにかぶりき、
はたまた、ベトナムあたりアジアの熱帯夜、
どす黒いメコン川でとれた魚介を
材料にするあやしげ屋台を
ローカルビール片手にはしご、などいろんな光景が、
頭の中を駆け巡る。
急いでする必要もないのに、
トランクにつめる旅の小道具などを
点検したり・・・。

 つい、先日キューバとアメリカの国交正常化が
正式に決定したとのニュースを聞いた。
そこでぼくが、以前キューバに行った年を
調べてみたら、ちょうど10年前だった。
ぼくの中ではスペイン、ブラジルとともに何度でも
訪れたい国の最強トップ3に
ランクインするキューバはスペイン統治時代、
アメリカ統治時代の文化、建築物を
悲喜こもごも、今なお絶妙なバランスで
色濃く残したまま、アメリカからたった150キロしか
離れていないカリブ海の上に浮かんでいる。
アメリカから経済封鎖を受けながら、
物資は不足しているが識字率は世界一、
教育と医療の水準もたいへん高くすべて無料、
というのも尊敬すべき絶妙なバランス感覚。
 
 嵐のような際限ないシンコペーションリズムが
特徴のキューバ音楽。
もちろん、それを演奏するには
たいへんな技術を要するが、
本来は踊るための音楽であることに間違いなく、
プレイヤーはさておき
聴衆の立場ではただ感じるままに、
全身でリズムと呼応し、
(いささか直接的で甘ったるい歌詞も多いが)
純粋に美しいスペイン語の響きに
酔いしれればいいのもキューバ音楽の魅力。

 キューバ音楽が他地域に与える影響力は
今までと変わらず絶大であり続けるが、
1961年のキューバ革命以来、
時間が止まってしまったようなハバナの
街並みはこれから急激なスピードで
変化していくことは想像に容易い。
マレコン通りを走る生きた化石のような
郷愁感ハンパない
ボロボロクラシックカー達ももう数年後には
姿を消してしまうだろう。
今のキューバを目に焼き付けるには、今しかない。
ここ数年、ヨーロッパ方面への旅が多かったので、
今年の秋はキューバに行くことに決めた!

 せっかく海外に行くのだから、
1カ国だけではもったいない。
いつも、なるべく2、3カ国はセットで
旅することにしている。
スペイン語圏の国はすべて
訪れてみたいと思っていたが、
今回はまだ足を踏み入れていなかった
メキシコをそのセット国に選んだ。
キューバがメインの旅になるが、
メキシコを単なるトランジット地にしてしまうのも
もったいなく、より自由にまわってみたいので、
日本からメキシコへの往復チケットと
メキシコからハバナへの往復チケットを
別々にインターネットで購入し、メキシコ3泊、
キューバ5泊という旅のアウトラインをざっくり描く。
(日本→メキシコ→キューバ→メキシコ→日本)
メキシコのマヤの古代遺跡、音楽、タコス、
コロナビールも楽しみだ。
宿は一切予約しないで、なるべくその日その日の
偶然と直感に従い行先を決めていこう。
レッスンはこのため11/4~11/14まで
お休みいただきます。

 先日、9/6本番で演奏する「ボレロ」の
2回目のリハーサルがありました。
みなさん、個人練習にも励んでいるようで、
アンサンブルが楽しくなってきました。
暑い日々が続いていますが、
目標に向かって有意義な夏を過ごしましょう。



6月の日記


手弾き


 最近、コンピュータによる音楽製作環境の
見直しをしました。
どうしても避けて通ることのできない、
定期的な設備投資・・。
今の状況で何の不満もないのに、
OSが新しくなったことによってこれまでの
ソフトに不具合がでてきたり、
かと思ってソフトの最新バージョンを購入すれば
不具合はなくても明らかに
以前の方が使いやすかったりと
パソコンまわりには、なかなか小さな問題や不満は、
尽きない。

こんなことを考えていると、
いろいろと他の理不尽も思い浮かんでしまう。
プリンターでの印刷がほとんど黒だけで
足りるのになぜだか他の色まで消費していたり、
黒インクはあるのに他色インクがないがために
白黒印刷ができないとか。
WindowsのOSは新しく導入したOS8より、
以前のXPの方がわかりやすくて、
使いやすかったのにもう戻ることはできない・・・。
ちなみにぼくのメインマシンはMacですが
このホームページを作ってきた
ホームページ作成ソフトが
Windowsにしか対応していないので、
長年このためだけにWindowsのノートパソコンも
1台所有しています。
(ホームページのコンテンツがかなり
増えてしまったので、
今更、他のホームページ作成ソフトに
かえる事もかなり億劫)

 コンピューターで音楽を製作するのに
必要なものには、ざっくりいえば
1.コンピューター 2.DAWソフト 
3.オーディオインターフェイスの3つ。
まあ、他にもこまごま挙げればもちろん、
楽器やマイクやモニタースピーカーなどもありますが
最重要はやはり上記の3点です。
1.のコンピューターについてはよしとして、
2.と3.については
どんなものか説明が必要です。
DAWソフトのDAWとはDigital Audio Workstationの
意味でコンピューターで録音、
編集等をさせるためのソフトウェア。
オーディオインターフェイスはコンピューターと
ソフトウェアを仲介するもので、
楽器演奏をスムーズにコンピューターに
取り込むための機器。
 そもそも、ぼくがパソコンを始めたのは音楽を
作りたかったからですが、
それはもう20年以上前のことになります。
お世話になってきたDAWソフトは
ローランドのミュージ郎、Cubase(キューベース)、
Sonar(ソナー)、Protools(プロトゥールズ)など。
最近までProtoolsを使ってきましたが、
MacのOSを最新にしたら、表示されない部分などが
でてきてやや不便になり
このソフトのアップグレードも考えましたが、
今回は思いきって現在、
最もMacと親和性が高いと思われる
Logic Pro Xへ乗り換えることにしました。
Macの扱いは慣れているとはいえ現在の
DAWソフトはかなり高機能になってきているので、
異なるソフトを使い始めた直後は操作を
覚えるのにとても骨がおれる。
今やソフト自体もインターネットを経由した
ダウンロード版が主流で、
紙に印刷されたマニュアル本すらない。
わからないことがあれば、電子マニュアル、
インターネット上でのキーワード検索、
市販の解説本、Youtubeなど
あらゆる手を使って調べ、最終手段はメーカーに
電話してまで聞く。
しかし、この手のトラブルは感情的にならず冷静、
そして地道に調べていけば、たいていは解決できる。
多くの時間と体力を消耗してしまうのも
事実だが・・・。
結局、どんなソフトの扱いも慣れるまでは、
似たり寄ったりと思います。
本来やりたい作業に入る前に、ソフトの操作方法を
かなり勉強しないといけない。

 オーディオインターフェイスは
今まで使っていたものを、
そのまま残しましたが
DAWソフト乗り換えに合わせて、ソフト音源と
エレアコギターを録音するための機器を
新たに調達した。
ソフト音源は様々な楽器の音色
(サンプリングデータ)を
コンピューターに読み込んだ後、
DAWソフトからの指令を実際の音として
出力させるものです。
各社からソフト音源は多く発売されていますが、
近年のものはどれも本当にリアルな音です。
いくつかのソフト音源を、比較してみて今回は
「VIENNA INSTRUMENTS」の
オーケストラ音源に決定。
木管、金管、ソロストリングス、
オーケストラストリングス、鍵盤、打楽器
すべて揃っていて
パソコンから出てくる音は本当に生楽器とほとんど
聞き分けがつかない。

 今やほとんどの楽器(民族楽器なども含め)は、
MIDIキーボードやマウス操作だけで
パソコンから再現できるようになってしまった。
唯一、再現が難しいのは、やはりギターだろう。
ギターは弦がこすれるノイズ、スライド奏法、
チョーキングなどギター特有の繊細な
表現が味になったりすることが多いので、
これらをパソコンで再現するには
膨大なデータを打ち込んでいかなくてはならなく、
結局は
「ギターは、弾いた方がはやいやん!」て、
ことになる。
いくらソフト音源の音が優れているといっても、
ギターだけは今のところまだ手弾きには、
かなわないのだ。


 しかし、生ギターの録音は難しいし、手間がかかる。
マイクも数本必要、外部からのノイズにも
気をつけなくてはいけない。
かといって、マイクを使わず、ライン出力の
あるピエゾピックアップを内蔵した
エレアコギター
から
オーディオインターフェイスにつないで録音しても、
音はよくない。
この録音方法ではノイズの心配はいらないが、
どうしてもマイクで拾った空気感や
ギターのボディの鳴りは削られてしまい、
とても人工的で味気ない音になってしまう。
ぼくは、ゴダンというメーカーのエレアコを
持っていて、
クラシックギターとネック幅も同じで弾きやすく、
安定した楽器なのでライブではよく使っています。
決して安い楽器ではありませんが、
それでもやはりピエゾ特有の音
(ピエゾクラックというらしい)の
宿命はもっている。

 そこで、エレアコギターの録音の
悩みを解決するために見つけたのがこれ。
「FISHMAN AURA SPECTRUM DI」


 インターネットで見つけたアメリカの製品。
Youtubeで検索してみるとアメリカ人数人がこのDIの
試奏をしているのを見た。
ピエゾクラックをかなり回避できそうだ。
このような製品は一般的にDI(ダイレクトボックス)と
呼ばれています。
このFISHMANのDI、4万円近くと
なかなかのいいお値段・・・。
躊躇したが、買ってみて正解!
正直、今までのDIの中では1番ではないかと思う。
ゴダンのエレアコと
オーディオインターフェイスの間に
接続してパソコンにラインで録音してみると
空気感やボディ鳴りも感じられた。
これで、ギター録音もまた楽しくなりそう。

 来月から9/6の演奏会のリハーサルが始まります。
出演の方はトップページから
スケジュールを確認して、
都合のよい時、参加してください。
リハーサルもいつも楽しいです。
本番、リハともに見学だけも歓迎!



5月の日記

心に通ずる道は胃を通る


 4月あたまくらいまでは、寒さが行ったり来たりで
石油ストーブをなかなか片づけられずにいましたが、
いつの間にか、すっかり夏の陽気がやってきて
冷房エアコンのお世話に
なるようになってしまいました。
この季節の楽しみとしては、ベランダのプランターに
植える野菜の苗をホームセンターや専門店で
買ってくることです。
3月末くらいから、そろそろ、これらのお店に
お目当ての苗がまだ入荷していないかな・・・と、
そわそわしながら、時々のぞきにいったりします。
今年の3月はけっこう寒い日が多かったので、
例年に比べ野菜の苗が出回るのは
少し遅かった気がします。
それでも、4月中旬くらいから植え始めたゴーヤ、
ミニトマト、バジル、大葉はこのところの
日差しを浴び元気よく成長しています。
買ってきた時は背丈わずか10センチほどだった
2本のゴーヤはすでにぼくの身長を追越し、
ミニトマトはまだ赤くは色づかないけれど
黄色い花が咲き終わった後に、
小さな青い実がたくさんできてきた。
バジル、大葉の葉っぱも1枚1枚が、
香り高く大きい。
(もうスーパーで売っているものよりはるかに立派)

 ゴーヤの実はスーパーで売っているものほど
大きくはならないが、蔓がよく伸び、葉も大きいので
部屋の日差し除けのグリーンカーテンとして、
さわやかに活躍してくれる。
もちろん、実は小さくてもゴーヤチャンプルーに
してしまえば、独特の苦みは遜色なく、
しみじみ美味しい。
ミニトマトは、そのままサラダに入れてもいいし、
パスタソースやピザソースにしてもいける。
そして、このトマトの相棒にはバジルは欠かせない。
冬場のトマト料理には、主に乾燥して
粉砕してあるバジルを使うことが多いですが、
これからの季節はベランダから新鮮なバジルを
とってくることができるので料理の香りに
数段の違いがでてくる。
この収穫したてのバジルといったら・・・、
陶然としてしまうほど独特で強烈な香気。
お皿の上の太陽の光を浴びた赤と、
この鮮烈な緑の最強コンビ。
トマトを育てるならバジルとセットで
育てるものと思った方がいい!
 大葉は冷奴やあさりの酒蒸しなどに、
ベランダに走ってサンダルつっかけて、
ちゃちゃっと数枚、
摘んできて素早く刻んで上から散らせば、
目にも美しい。
細かく刻んだものを納豆に混ぜてもいいし、
贅沢に摘みたての葉1枚1枚に、
かつおの刺身を包んで食べるのも
季節を感じることができる。

 作家・開高健は「心に通ずる道は胃を通る」と
言っています。
やはり、芸術を語る人間は人生の限られた
時間の中で知恵をしぼって美しいもの、
美味しいもの(値段が高いという意味ではなく)を
食べることをおろそかにしてはいけない、
という意味かと思います。

 秋の大ホールでのスクール演奏会での
フィナーレでの、全員参加型アンサンブルの
アレンジがやっとできました。
曲目はラヴェルの「ボレロ」。
オリジナルのキーはCですが、
様々な過去のアレンジ、ギターの機能を
検証してキーE(ホ長調)にすることにしました。
誰でも参加できる5つのパートからなる
楽しいギターアレンジを心がけました。
(楽譜はインターネット上のクラウドストレージに
公開しています、必要な方はお問い合わせください)
リハーサルは7月中旬より本番までの期間で
3~4回やる予定です。
興味のある方は”楽しむこと”が主目的ですので、
気軽に都合のよい時だけでもリハーサルに
参加してみてください。
見学も歓迎です。


4月の日記


歴史は楽し

 4月は春のサロンコンサートがありました。
生徒さんによく出演してもらっているのですが、
ただ演奏だけでもつまらないな、
と思いテーマを決め、ぼくの小さな
音楽講座みたいなものも毎回やっています。
今回はギターと音楽史と題してルネサンス、
バロック、古典、ロマン派、印象派、
現代と時系列にそって
各時代の音楽を解説・演奏していきました。
 ぼくらは、普段クラシック音楽として数百年前の
音楽を勉強しているわけですが、
その音楽が書かれた時代背景を知ることは、
自分の演奏表現にとても重要な役割を果たします。
世界史(主にヨーロッパ)と音楽史を関連付けて
俯瞰してみるのは楽しい。
15世紀、イタリアからおこったルネサンス思想は
1000年にわたるキリスト教の「教化」が
人間性の向上に
あまり役立っていないとし、
マルティン・ルターが行った
宗教改革と深い関わりがある。
ルネサンスが手本としたのはキリスト教の
助けがなくとも、
優れた政体と豊かな文化を持ち、
広大な帝国を数世紀に渡って維持してきた
古代ローマや古代ギリシャだった。
そんな時代背景があったから、ルネサンス期には
たくさんの舞曲が書かれました。
それまで神にささげることが大きな
存在理由だった音楽が、人間のためにも
振り向いたのです。
 そんな事を思いながらダウランドなど弾いていると
実に心が癒され、しっくりきます。
ルネサンスの特徴である多声音楽は、
バロック時代に引き継がれより複雑となり
バッハによって頂点を迎え、
そして新たな時代である古典、
ロマン派、印象派、近・現代へと・・・。
以下のような年表を作ってみました。
参考にしてください。

 サロンコンサートで演奏と講座以上に(?)力を
注いでいるのが、ひととおりプログラムを
終えたあとのバータイム!
料理することと、食べることが大好きなので、
2日前くらいから仕込みに入ります。
テーマは手作りにこだわり、
みんなにも参加してもらう。
今回のメインはベランダバーベキュー、
ピザ、イカ墨のパエリア。
炭火おこし、焼き物担当の方ありがとう!
ピザ作り初めての方もありがとう!
(これも炭火で焼く)
炭火はすべてを絶品にしてくれました。
かくてバータイムはセッションタイムとなり
夜は更け、
楽しくてまた7時間もやってしまった・・・。



3月の日記

原風景

 子供の頃から、鼻が悪かった。
常にすっきりしない。年中、左右両方の鼻、
またはどちらかは必ず詰まっている。
だからいつも鼻声。
春はそれに加え、詰まっていたと
思っていた鼻から知らぬ間に鼻水がタラ~リ、
くしゃみが止まらなくなったり、
目もずいぶんとかゆくなったりと、
たんなる鼻炎とは片づけられず、
これはやっぱり・・・。
長年、花粉症ではないと言い張ってきたが、
さすがに近年はそれも認めなくてはならない、
目かき過ぎ、、鼻かみ過ぎの顔真っ赤状態。
認めた瞬間から花粉症になってしまうのかと思うと、
自分に負けたようで悔しい。

 花粉症との付き合いは、いやなものですが、
やっぱり春という季節は何だか
長いトンネルを抜けた後のようで気分がいい。
故郷の札幌の桜の季節は東京から、
ほぼ1か月遅れてやってくる。

東京に住むようになってから、
帰省するのはだいたい夏か、正月なので
北海道の春はもう長い間見たことがない。
ゴールデンウィークのあたりがだいたい桜の
満開の時期だったと記憶している。
分厚い雪で覆われていた街の雪解けのピークは
3月中旬から4月あたまにかけて。
今の札幌の春の状況は久方、体験してはいないが、
札幌はなかなか交通量も多く、
ぼくの子供の頃は今のように車の
スタッドレスタイヤなど存在していなかったので
冬が終わろうとしている時期でも、
けっこうワイルドな鋲をむき出しにした
スパイクタイヤをはいた車が、
アスファルトの道路をガリガリと削りながら
街中走っていた。
ほぼ、雪の季節が去っていったと思っても、
しぶとくその後から降る雪もあるだろう。
北海道のドライバーは、本当に春を
実感するまで疑い深く
けっこう長いシーズン中、スパイクタイヤを
つけっぱなしだった。

 今はタイヤの性能も向上し、
それほど道路を削るものではないが、
とにかくぼくの春の原風景の1つは、
ほこりっぽい街だ。
道路脇にはまだ溶けきれず残った雪にその
アスファルトのほこりが降り積もり、
また徐々にそれらが溶けてドス黒く混ざり合って
あまり麗しくない光景・・・。
麗しい光景ではないが、確実に春が
やってくる証拠でもある。
それが独特な言葉にあらわせないほこりっぽい春の
匂いの記憶とも結びついている。
 冬の原風景。冬の始まり、北海道では雪が
降り始める時期の少し前くらいに
、雪虫という雪に似た小さな虫が
ちらちらと飛び回ります。
その時も、ああもうすぐ冬なんだなあといった匂いが
冷たくなっていく空気にふくまれたように感じます。

唯一の匂いだから他のものに例えることが難しいが、
この原風景というやつには匂いが
セットされているような気がします。

 4月12日(日)16:00よりスクールにて
春のサロンコンサートあります。
様々な時代の音楽を時系列にそって
演奏していきます。
飛び入り、聴くだけも歓迎!
いつも楽しく盛り上がっています。
お気軽にお越しください。

2月の日記

今年はフランス印象派

 去年の秋、教室の演奏会フィナーレは出演者全員で
ステージにのるという初の試みで盛り上がりました。
そして、独奏にも多くの収穫がありますが、
アンサンブルにもまた「みんなで創り上げる」という
大きな喜びがあることを再認識できました。

 今年もこの大編成アンサンブルをやろうと
考えています。
せっかくやるには、既成の楽譜を使うのではなく
スクールの生徒さんたちの顔を思い浮かべながら
名曲をアレンジしたい。
「○○さんにはこのパートを弾いてもらおう、
○○くんと○○くんにはここでハモってもらおう・・」なんてことを
想像しながら音符を埋めていくのも楽しい。
9月の本番にはちょっと早そうだが、
編曲は意外と時間のかかるもの。
逆算すれば、そろそろ選曲して、
作業を始めなくてはならない時期。
去年はブラジルもののメドレーでしたが、
今年はまた切り口を変えて何かアンサンブルにおいて
興味深いものはないかと悩む。

 1人でも多くの生徒さんが様々な役割で参加でき、
音楽や仲間やギターに感謝できるような
アンサンブルが目標!
そこで、今年は大好きなフランス印象派作曲家、
ラヴェルの「ボレロ」でいくことにしました。
この曲はボレロのリズムにのせてAメロ、Bメロを
ひたすら繰り返し、徐々にダイナミクスを上げて
クライマックスにもっていくという一見すると、
とてもシンプルなものですが、
分析してみるとラヴェル独特の
オーケストレーションの
アイディアがふんだんで実に面白い。
ユニゾンする楽器の組み合わせが
意表を突くものだったり、
異なるキー(調)のメロディーでハモってみたりと
飽きさせないようにできています。
超有名曲だけあって、たくさんのアレンジ、
編成が世の中に存在しますが

ここはスクールのための
オリジナルアレンジでなくては!

 原曲のアイディアをなるべく取り入れつつ、
新鮮で楽しいギターアレンジが5月くらいに
できたらいいな・・。
リハーサルも、本番もきっと勉強になるので、
興味のある生徒さんはどんどん参加してください。

 

1月の日記

10代の胃袋

 今年1発目のサロンコンサートも25日、
無事終わりました。
パフォーマンスしてくれた方、聴きにきてくれた方、
ありがとうございました。
ぼくの担当するミニ講座のテーマは
「スペイン」だったので
ロドリーゴ、ナルバエス、リョベート、アルベニス、
モンポウ、ファリャなどの作品を演奏し、
コンサート後は、いつもの飲み会。
ワイワイやりながら、
スペイン料理もいくつか作りました。

 スペイン料理といって日本人が筆頭に
あげるのはやはり、パエリヤでしょうか。
バレンシア地方発祥の魚介のスープの
炊き込みごはん。
これはやっぱり、雰囲気も大事なので普通の
フライパンより本式の平たい専用鉄鍋で
やりたいところ。
インターネットでもたくさん取り扱っているので
入手は簡単。
ぼくが現在使っている鍋は直径40センチ。
以前、家庭用だからと小さめの鍋を購入したが
お米の他に豊富な具材やスープを入れ、
火にかけると吹きこぼれが多く、
作りにくかったので大きめの現在のものに
買い替えました。
普通のフライパンでもおいしくできますが、
より本格的に広範囲のおこげを作るには、
専用の鉄鍋がいい。
かつて、本場バレンシアで食べたパエリアは
本当に素晴らしかった。
味も香りもさることながら、お米は芯をわずかに
残す炊き加減、そして適度につくられたおこげとが
口中で絶妙なバランスを生み出し、
見事な職人技をみた思いだった。
スペインならどこでも美味しいパエリアに
出会えるかというと実は、そうもいかない。
コルドバの観光地、メスキータ周辺には店先に
パエリアの看板を掲げているレストランを多く見かけ
試しに注文してみたがイマイチだった。
その原因のひとつにパエリアに欠かせない香辛料
「サフラン」がある。
一般に香辛料として売られているものは、
サフランの花にあるわずかな雌しべだけを手作業で
収穫し、乾燥させたもので、その手間からも
うかがい知れるが、とても高価な香辛料。
パエリアを作るときに指先でほんの少しつまんで
入れるだけで、お米が輝かしい黄金色にそまり、
またその香りも独創的で食欲をそそる。
観光客が大勢やってくるような観光地のレストランの
パエリアにこの本物のサフランを使うことは
コスト面から厳しくターメリックで代用し、
色だけはサフランに似せているが、味は数段落ちる。
もちろん、ぼくが作る時もサフランは忘れない。
今回もなかなかの出来で、
あっという間にみんなの胃袋におさまった。
作った料理が人に喜ばれるとやはり嬉しいもの。

 料理はもともと、両親が共働きだったせいもあり、
子供のころからお腹が空けば必要にせまられ
けっこう自分でやっていたので、どちらかといえば好きです。
高校生の頃は朝、新聞配達のため
早く起きていたので、ついでに弁当も
自分で作っていた。
しかし、10代の頃はなんであんなにも
よくお腹が空いていたんだろうと
普段、レッスンで高校生たちと接していると
しばしば自分の当時のことが思い出される。
空腹が、がまんできず、自分で作った弁当は
だいたい午前中の授業の2時間目と3時間目の間に
消費してしまい、
昼休みは昼休みで、売店でパンを買ったり、
学校を抜け出し近所の食堂でラーメンを食べたりが、
当たり前。
さらに、昼食と夕食の間ににもけっこう
しっかりしたものも食べていた記憶がある。
あの驚異の胃袋を持っていた時代が懐かしい・・・。
受験期の生徒さんもたくさんいる時期です。
かぜをひかぬよう、そして健闘を祈っています。