ブルガリア・リズム

 ハンガリーの偉大な作曲家バルトークは
全153曲からなるピアノ曲集「ミクロコスモス」の中で
ブルガリア・リズムをとりあげている。
曲集の中では113番、115番、148番、
149番、150番、151番、152番、153番の計8曲が
それにあたります。

バルトークは「バルトークの世界」
(バルトーク著)の中で
「ブルガリア・リズムとは、拍子の単位である
8分音符がメトロノームで約300から400の
拍数に匹敵するほど異常に早く、
さらに、こうした異常に早い8分音符を
単位として、特殊拍子を構成するような形で
結合されたリズムの種類である」
と、言っています。
以下、8曲について、8分音符を基準にした
分割方法をまとめました。

113番  2+2+3   
115番  3+2   
148番  4+2+3   
149番  2+2+3   
150番  2+3   
151番  3+2+3   
152番  2+2+2+3   
153番  3+3+2   

 
 ここでは以下に113番と115番の譜例と
音源をとりあげました。

譜例1 113番


 音源1は113番です。
7拍子がタタ・タタ・タタタという2+2+3分割に聞こえます。
テンポはわかりやすさのため、ゆっくりです。
(8分音符=250)
7拍子の伴奏の上のメロディーは4小節目の
拍の頭で始まりますが、5小節目では
それがひっくり返り、
6小節目でまた拍の頭にいつのまにか
戻ったような錯覚をおこします。

音源1   

譜例2 115番

 音源2は115番です。
5拍子が3+2で始まりますが、
9小節目から2+3に変化します。
その後、17小節目から再び3+2に戻ります。
テンポは8分音符=250です。

音源2   

 バルトークによれば
「これらのリズムは農民音楽の最も自然な
発展過程において形成されたもので、
作曲家たちがなけなしの知識を搾り出し、
新しいものを取り入れようとする苦しみの
犠牲によって生み出されたものでは
ありません。
それはともかく、こうしたリズムが
教育を受けた音楽家たちにとってはたいへん
困難であったのです。
農民たちにとってはまさに正反対です。」

 リズムのアプローチにおいて東ヨーロッパの
音楽も興味深いものです。
とりあげたもの意外のブルガリアリズムも
聴いてみるとよいでしょう。