変化和音 ナポリの2


 ナポリの2はややこしい。
なぜなら、ナポリの6ともいったりするからだ。
どちらも同じものだが、呼び方が違う。
個人的にはナポリの2の方が
わかりやすいので、
こちらで話をすすめます。

 ナポリの2とは変化和音の一種で17世紀、
イタリアのナポリの音楽家がよく使ったことから、
こう呼ばれるようになりました。
心に迫る印象的な変化和音です。
端的に言えば、ナポリの2とは短調の
音階上の2番目のコードの根音が
半音下がったもの。

譜例1

 譜例1のa.が通常Aマイナーキーの2番目に
できる3声和音であるBディミニッシュ、
b.はその根音が半音下がった(変化した)
Bbメジャーコード、
c.はさらにb.の根音を1オクターブ上げた
第1転回形と呼ばれるもの。
この第1転回形の場合の根音とトップの
音程が6度関係になり、この転回形で
使用されることが多いことから
ナポリの6とも呼ばれている。
時々「ナポリの6って何?」って質問されると
一瞬説明に窮することがある。
これは2番目の和音の根音を半音下げて、
さらに第1転回形にして・・・と、
2段階で考えないといけないからだろう。

シンプルに覚えておきたいなら、
ナポリの2がいいでしょう。
短調の主和音の半音上の
根音を持つメジャーコード

 具体例をクラシックギターの
定番エチュードから探しました。
譜例2はカルカッシの7番、
後半のテーマに戻った部分。
2段目に突如現れる和音は、
構成音からしてB♭メジャーコードらしいとわかる。
(第1転回形になっている)
本来このキーでの2番目の和音は
Bディミニッシュですがそのルート音(B)が
半音下がるとB♭メジャーコードになる。
主和音(Am)から見れば半音上(短2度上)の
メジャーコードとなり、ナポリの2度と
解釈することができます。

譜例2 カルカッシのエチュード 第7番

 もう1曲はソルの有名なエチュード
「月光」の1部です。

譜例2

 この曲のキーはBマイナーです。
つまりこのキーにおけるナポリの2は
Cメジャーコードです。
短いエチュードですが、やはり曲の
一番盛り上がるところで使われています。