和声分析 ソルのエチュード1番

 セゴビアが編集した「有名なソルの20の練習曲」
から和声分析をおこなっていきます。
美しく、そしてKeyがCということで
わかりやすいので第1番を選びました。
この曲の特徴は

1.三声のメロディーが対位的に書かれている。
2.目まぐるしい細かな転調。
3.非和声音の多用。

 転調

 この曲のキーはC(ハ長調)ですので、
音階上にできるコード(ダイアトニックコード)は
C、Dm、Em、F、G7、Am、Bm7(♭5)
となります。
和声進行において緊張→弛緩を生み出すのは
もちろん5番目の和音から1番目の和音に
進行するときです。
このkeyCにおいてはG7→Cで、5番目のコードを
ドミナントセブンスと呼ぶため、
ドミナントモーションと言われる。
転調を含む曲は含まない曲に比べて
色彩感豊かといえるでしょう。
その転調を見やぶる一つの方法は、
本来のKeyのダイアトニックコード群にはない
ドミナントセブンスコード(○7)を
見つけ出すこと。
この曲では本来G7のみがドミナントセブンスコード
ですが、その他にも本来存在しないはずの
A7、E7、D7、C7といった
ドミナントセブンスコードが
散見することができます。
(矢印の部分)
和声学上の約束事としてドミナントセブンスコードは
主和音(トニック)に解決されることになっていて
やはりそれは5番目のコード→1番目のコードと
いうお約束の進行です。
例えば、A7というコードはKeyDまたは
Dmの5番目にあたるので、この練習曲1番の中で
でてきたA7もその直後の解決コードは
DmかDになっています。
30小節目にいたっては、行った先がさらに
その先のG7のドミナントセブンスになっているという
ドミナントセブンスの連続技になっています。
(ソルの曲やジャズなどでも多用される)
これは狭い範囲で頻繁に転調が現れると
考えることができます。

譜例 Estudio1 Op6 no.8

非和声音


 この練習曲は非和声音も多く見られます。
非和声音とは本来その和音構成音にない音のこと。
例えば、Cコードの構成音はド、ミ、ソ、シ、
ですからCコードにこれら以外の音が
付加された時、その音を非和声音と呼びます。
(37小節のレの音など)
広義にはコード構成音以外の音は
すべて非和声音と呼ぶことができますが、
使われ方によっていくつかに分類されます。

倚音(appoggiatura いおん)・・・
和音構成音の上部または下部2度にあって
不協音程をもたらすもの。
譜例1段目の青い○で囲んだ音。

掛留音(suspention けいりゅうおん)・・・
和音構成音の2度上にある非構成音が
先行和音より保留され
一時的に不協和音程を生じた直後、
構成音に解決するもの。譜例33小節以降の
赤い○で囲んだ音。